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【精神疾患の治療は一筋縄ではない】うつになった原因を取り除けば、うつはすっかり治るのか

こんにちは、のの(@mentalhelp_labo)です。

今回は、「うつになった原因を取り除けば、うつはすっかり治るのか」について考えます。

うつの原因が解消されるのだから、治るんじゃないの?

という方にこそ読んでいただきたいです。

はじめに

双極性障害であるわたしにも、うつ病の夫にも「うつになった原因」というものがあります。

まずはじめに、わたしたち2人の場合をご紹介します。

双極性障害のわたしの場合

わたしは小学生の頃から生徒会活動が好きで中高と生徒会長を務めていました。

大学でも当たり前のように自治活動に携わり、毎日朝一の講義前から自治活動部屋に寄っては書類作成などをし、講義後も終電まで会議や書類作成、企画立案などをしていました。

要領は良い方ではありませんでしたが、努力と向上心、生真面目さ、何よりも自治活動が好きという気持ちであらゆる「仕事」をこなしていました。

先輩からの期待も大きく、次期議長(学部の自治会長みたいなもの)に選出されていました。

大学全体を巻き込んだ大きなイベントが間近に迫り、大勢の人前に立ったり大勢の人の意見をまとめたりすることが多くなり、わたしはこれまでにない大きなプレッシャーと責任感を感じていました。

そのイベント前にうつっぽい症状(講義に出られない、講義に出ていても大勢の人が出席している講義では息がうまくできずに途中退席してしまう、等)は出ていましたが、そのイベントが終わればこの大きすぎるプレッシャーから解放されることができると思っていました。

しかし、イベントが終わっても次期議長に選出されていたこともあり、自分自身で力を抜くことができず、緊張感と責任感で押しつぶされてしまいました。

そうしてわたしは大学に行くこともできなくなり、次期議長役を文字通り「解任」されました。

解任されるまでの2ヶ月間、少し業務から離れてお休みする期間を与えられましたが、その期間も「あと2ヶ月したら戻らなければならない」と自分を追い込み結局戻れませんでした。

そうしてわたしの「うつになった原因」は解消されました。

忙しい自治活動から完全に離れ、単純に学生生活を送ればいいだけになりました。

しかし、わたしのうつ状態は一向に良くならず、むしろ酷くなっていきました。

アルバイトに行くにも学校に行くにも「行かなきゃ」と思うほど、体が言うことを聞きませんでした。

自分の体はもう自分の意思で動かなくなってしまっていました。

わたしの場合、うつになった原因を取り除いてもうつが治ることはありませんでした。

うつ病の夫の場合

夫のほうは要領は良いのですが、責任感と自分の正義を強くもっており柔軟に物事を考えたり捉えたりするのが少し苦手です。

また、人見知りが激しく、あまり良く知らない人とうまくコミュニケーションをとるのが苦手で、仕事で「あなたの言ってることは良く分からない」と言われてしまったこともあるようです。

そんな夫は、仕事と仕事上の人間関係で悩み、うつを発症しました。

布団にくるまって「もういややー」と何度も叫んでいたのを覚えています。

夫は学生の時にわたしのうつ状態で酷い状況を一番近くで見ていたので、発症後すぐに心療内科を受診しました。

職場の先輩にも「うつ病」と診断されてすぐに相談し、少し業務内容を見直してもらえたようです。

悩みの種となっていた人間関係についても、ある程度早いうちに人事の入れ替わりがあり、少しうつの原因は解消されました。

しかし、休職や転職をしたわけではないので、完全に原因を解消できたわけではありません。

今でも仕事に行くのは毎日辛いようですが、それでも頑張って出勤してくれています。

(発症前から「仕事やめたい」「行きたくない」は連呼していました。)

うつを発症した当時から考えると現在は薬の量も減っています。

夫の場合、うつになった原因を完全に取り除けてはいませんが、寛解へと向かっています。

うつの原因を取り除くことは可能か

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うつの原因は人それぞれですが、できればその原因となったものを取り除いて、ゆっくり休養して治療をしていくことが望ましいですね。

しかし、そもそもうつの原因を取り除くことはできるのでしょうか。

わたしの場合はその業務から完全に離れ、休養させてもらうことが可能でした。

しかし、夫の場合はわたしが継続的に働くことが難しく、家のローンもあるために休職や退職してゆっくり休むことが選べませんでした。

(本当は休職や退職してしっかり休んで欲しかったのですが、わたしの状況が安定していなさすぎて頑張らせてしまっていて申し訳ないです。)

どうしてもうつの原因を完全に取り除けない場合もあると思います。

その場合でも、できる限り周りに助けを求めて、その原因からは積極的に離れたほうがいいです。

仕事の内容が原因なら、転職も考えられると思います。

夫婦関係なら、物理的に距離をとるのも選択肢の一つだと思います。

もしその原因から離れられない場合は、同じ悩みを持っている人と接点をもつことで何か糸口が見えるかもしれません。

自分の体のことがコンプレックスになっている人やどうしても仕事を続けなくてはいけない人など、原因を完全に取り除くのは難しくても誰かがやっている工夫が自分にも合うかもしれません。

原因を取り除けばうつはすっかり治るのか

できればその原因となったものを取り除いて、ゆっくり休養して治療をしていくことが望ましい、と前述しましたが、原因を取り除いてもうつをすっかり治すことは難しいとわたしは考えています。

すっかり治る=病気をする前の状態に完全に戻るのは難しい

ここで「すっかり治る」という意味を「病気をする前の状態に完全に戻る」と捉えられている方もいらっしゃると思います。

しかし、うつを経験すると「病気をする前の状態に完全に戻る」ことは難しいです。

少なくとも病気をする前の状態に戻ってしまうと、またうつを再発してしまう可能性が高いです。

わたしは「うつを治す」のではなく「病気と共に生きる」ような考え方が必要なのではないかな、と思っています。

うつの原因となったことをできる限り取り除き、うつを経験してわかった気づきや自分でできる対処法などを模索しながら、徐々に寛解にむかっていけるのではないでしょうか。

「治す」ことにこだわらずに自分らしく生きていけたらいい、とわたしは思っています。

(夫からは「早く治せ」と言われますが、わたしの中では「治すんじゃないのよ」と意思は固いです。笑)

考え方を根本的に見直すことも必要

うつになった原因は外的要因も大きいと思いますが、自分の考えや性格によるものも大きいと思います。

わたしは真面目すぎて責任感が強すぎるのです。

もう少し適当に考えられたら、もう少し軽く物事を捉えることができたら、といつも思いますが、生まれつきのこの性格を簡単に変えることは難しいですね。

ただ、「人間は生きている限り細胞分裂をし続け、生まれ変わることはできる」と友人に言われたことがあります。

生まれ持っての性格を変えることが難しければ、いろんな考え方を取り入れて少し変わった見方をできるようになればいい、と思うのです。

わたしのバカがつくほど真面目な性格や責任感の強さは強みでもあります。

だからこそ、変えたくない性格でもあります。

しかし、この性格により苦しんできたことも事実です。

いい意味で少しアホになれる考え方を取り入れ、最近やっと冗談が言えるようになってきました。笑

考え方を180度変えることは無理でも、違う世界の人と接点をもったりいろんな人の考えを否定せず聞くことで少し肩の力の抜き方がわかるかもしれませんよ。

原因となる出来事を思い出させる言葉や人で振り出しに戻る場合も

うつの原因を取り除いても、うつの原因となった出来事を思い出させる言葉、人、行動で振り出し戻る場合もあります。

心的外傷後ストレス障害、いわゆるPTSDですね。

強烈なショック体験、強い精神的ストレスが、こころのダメージとなって、時間がたってからも、その経験に対して強い恐怖を感じることをPTSDといいます。

わたしの場合は、いまだに自治活動を一緒にやっていたメンバーには会えません。

今でもその活動していた場所に行くといろんな出来事がフラッシュバックしてくるようで、近づくことはできません。

発症から8年が経過していますが、おそらくこれからもずっとその人たちには会えませんし、その場所に行くことはできないと思います。

(夫と出会ったのもその場所なので、少し寂しい気はしますが…)

おわりに

精神疾患の治療は一筋縄ではいかず、単純にうつになった原因を取り除けば治るものではない、ということをお分かりいただけたでしょうか。

しかし、休養すること、そしていろんな人の考えを聞いて自分の考え方を変えてみる努力をすることで寛解に向かっていけるとわたしは信じています。

皆さんも治すことにこだわらずに自分らしく生きるために必要なことを探ってみませんか?

わたしは双極性障害というジェットコースターに乗っているような病気とともに生きていますが、なんとか日々楽しく送れています。

(これもすべて夫と両親、わたしに関わる全ての人たちのおかげです。いつもありがとうございます!!)